ラスト・タンゴを広島本通りのシネツインで観ました
ただいま夏休み的な感じで、祖父母のいる広島に来ています。
ここ数年は広島に来ると、何らかの映画を映画館に観に行くようにしています。比治山のトンネルを抜けたところにイオンシネマがあり、そこでおおかみこどもの雨と雪とかプリパラの劇場版を観たりもしているのですが、何より広島には、株式会社序破急が運営している映画館があるんです。
八丁堀とか本通り周辺に、サロンシネマ、本通りのシネツイン、八丁座の3つが現在あります。私が初めて序破急がやっている映画館に行ったのは、新天地のシネツインでAKIRAの35mmフィルム上映を観た時です。来てみたら狭いビルで本当にやってるのかな?と思いつつエレベータに乗って降りると、レトロな雰囲気の赤い絨毯が一面に敷いてあり、チケットカウンターにスーツを来て丸眼鏡を掛けた爺さんがいました。ワンコイン上映だったので500円だしてチケットを買い、劇場内に入るとなんかこう…凄くいい感じの空間だし、椅子もフカフカで、映画の内容も初見だったし、フィルム上映の味と相まって最高の鑑賞体験をしました。それ以来、序破急の映画館が結構好きになりました。
姉に誘ってもらって八丁座でやっていた思い出のマーニーを観た時も最高だったし、サロンシネマで観たセッション(Whiplash)も最高でした。ああ。なんで序破急の映画館はこんなに椅子がフカフカで、席の間隔がゆったりとしていて、空間が広すぎないんだろう。
新天地のシネツインは3年前に閉館をしたため、もうあそこに行くことは叶わず、思い出だけになってしまいました。そして本通りのシネツインも、建物の老朽化が理由で、今年の10月に閉館するそうです。ということで、そちらも行ってみようとラスト・タンゴを観に行きました。
ラスト・タンゴはタンゴ界で伝説級のペアらしいマリア・ニエベスとフアン・コペスの馴れ初めから現在までの足跡をたどる、ドキュメンタリーみたいな感じでありながら、あくまでタンゴのダンスシーンがメイン(そしてペアにとってもタンゴが人生のメイン)みたいな内容です。
新鮮だったのが、再現シーンの役者は幼少期を除くと活動時期と年齢に分かれてマリア役とフアン役それぞれ3人ずついるのですが、役者がタンゴのダンスを本人(主にマリア)に見てもらってアドバイスしてもらっていたり、役者と本人でインタビューするシーンが沢山出てくるところですね。
役者が本人と一緒に出ていると、過去の分身が人生の振り返りとして現れてきたようです。一方でマリアがタクシーの中で「男なんて利用価値がなくなったらゴミのように捨てるものよ」みたいに言ってマリアの役者が唖然としたり、「この頃のマリアの気持ちが理解できないのよ」と役者同士で話し合ってたりもします。
役者としては演じる役の心理をトレースするのはごく当たり前のことだろうと思いますが、観ているほうとしては当時のマリア/フアンとしても見てしまって、マリア/フアンという人間に入り込んでいった感じがします。そういう魅せ方もできるんだなあと思いました。
マリアとフアンがペアとしてどんな心境の変化を辿っていったのかは面白くて、最初と最後は本人同士が思い出のショーステージで踊るシーンなんですけど、間の話を通して全く印象が変わります。マリアが一度だけフアンを「コペス」呼ばわりする発言はメガトン級のインパクトがありました。
それでいてやっぱりタンゴが観ていて楽しいし映画館のスクリーンに映えますね。引っ張ってきた映像以外は、ライトアップされていて視線が自然と足にいくし、タンゴもペアダンスもよく分かんないけどすげー!という感じです。マリアの幼少期の家のシーンとか、セットの全体がわざわざ引きで出てくるんですが、最低限の演劇の大道具みたいな感じで力注ぐところ選んでるなあと思いました。たかだか1時間20分くらいの尺なのに、タンゴが目に焼き付けられます。
ラスト・タンゴはこんな感じでした。映画館で観てよかったです。というかシネツインで観てよかったです。